2月28日 朝

例年であれば今日で二月も終わり。今年はうるう年というわけで、米国大統領選があったり、オリンピックがあったりとにぎやかな年になりそうだが、そんなものはどこ吹く風で今日もサウナでととのうのだった。近所の銭湯でバスタオルを腰に巻かずに蒸されている男がいた。男の前腕には刺青があった。以下、彼を前腕刺青男と呼ぶことにする。サウナ室の入り口には「サウナを利用する際はバスタオルの着用をお願いします」という注意書きがあるにもかかわらず、なにゆえ、この男は下半身を露出しているのか。当初は慣習が変わったのかもしれない、とローカルルールビギナーサウナーは理解したのだが、一応、ルールなので、しっかりと腰に貸しバスタオルを巻き、サウナ室を利用した。違った。ルールは今も生きていた。最初、少人数の銭湯もそのうち、常連客がぽつぽつと集まりだし、やがてサウナ室も満席となった。常連客がサウナ室を埋め尽くすと、バスタオルを腰に巻いていないのは前腕入れ墨男ひとりということが判明したのだ。下段、左隅、入り口付近に位置する前腕入れ墨男はうつむき加減に目を閉じ、じっと蒸されている。常連客も寡黙だ。そして、そのときはやってきた。前腕がサウナ室をあとにすると、すぐに罵声合戦がはじまったのだった。あいつあほちゃうか。字い読まれへんのかな。書いたあるやろがい。だいたい上から目線やねん。男が立ち去ったとたん、打って変わって騒々しいサウナ室。よかったあ、バスタオル巻いといて。安堵した瞬間なのだった。十分に蒸しあがり、サウナ室から水風呂へ。女は陰湿な陰口が得意と聞くが、男にとってもそれは蜜の味なのかもしれず、そういった過去の場面が脳裏にちらちらと浮かぶ。今日はととのいそうにない。早々にあきらめ、ジェットバスを楽しんだのでした。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック