3月7日 朝
人間心理における相対性理論とは何か。すなわち、それこそが返報性の原理であり、何かをもらう、あるいは何かをしてもらうと、お返しをしたくなる心理が人間には働く。返報性には正も否も、善も悪もある。この心理が欠落した人間もなかにはいる。アスペルガー症候群と呼ばれるひとたちもそのうちのひとつなのだが、返報性の原理は社会基盤の根本ともいえる心理なので、高低差はあるが、たいていはその心理が働くと思っていい。近年、何かと話題に上るアンガーマネジメントも返報性の原理に基づいている。怒りという感情は絶対的なものではなく、ほとんどの場合、逆襲として用いられる。ということはこちらも相対的な衝動であって、理不尽な行為に対する抗議、あからさまな悪態への反抗、いじわるやいじめの撲滅、徹底抗戦、裏金問題や汚職を排除したいインプレッションなどが相対的に働くものと想定できる。観光地にハイシーズンとオフシーズンがあるように人間心理にもハイシーズンとオフシーズンが存在する。観光地に限らず、消費行動において、ハイシーズンでは価格が上昇する。逆にオフシーズンは価格が下がる。どういうことかというと、これは需給の関係性で説明できる。需要が高まれば競争力が強まり、供給量が上がる。需要が低ければ競争力が弱まり、供給量が下がる。何を当たり前のことを、と思いがちだが、この当たり前が理解できないから、人間心理に思いが及ばないのだ。なぜなら、需要が多いと、供給が追いつかず、供給量は下がり、需要が少ないと、供給は過剰となり、供給量はだぶつくのがセオリーと理解している人間が多いからだ。予測行動としては、せいぜい、雨が降る前に天気予報を見て傘を買っておこうと思うぐらい。翻って、返報性の原理に該当しない絶対的心理があるかというと、ある。返報性の原理をマーケティングに当てはめたとき、当然、見返りを期待してのからくりがあるのに対し、絶対的心理にはそれがない。ある有名が逸話がある。とある寺の和尚さんは毎朝、地域住民に必ず声掛けをする。おはようございます。住民も無論、挨拶を返すのだが、ひとりだけ、決して返事をしない若者がいた。和尚がおはようございますといっても当然のように無視するのだ。和尚は無視されても毎朝、その若者に向かって挨拶を繰り返す。この和尚のすごいところはこの報われないやり取りを十年間、続けたことだった。若者のハイシーズンは終わり、とうとう根負けし、和尚に挨拶を返した。和尚は驚いたような素振りをおくびにも出さず、普段通りに接したのだった。おしまい。