2月19日 朝

ここ20年で大相撲界を取り巻く環境は激変した。兄弟子による暴力、いじめ問題からはじまり、八百長、ギャンブル、反社との接点、出るわ、出るわ、角界の膿が、といわんばかりの連続だった。それで、驚いたかというと、とんでもでべそで、こんなこともしてたの、え、あんなことも、というよりは、そうだろうなと思えるものばかりだったのが、やはり時代性というものなのだろう。スポコン時代の名残というか、鉄拳制裁が当然。練習中に水たまりの泥水をすすったりするのが常識の時代に育った人間にとって、大相撲といえば、さらに厳しい勝負の世界、番付がものをいう縦社会というのが一般人の常識にも染みついていた。ちなみになぜ、泥水をすすっていたかというと、練習中に水を飲んではいけない決まりがあったから。練習中に水を飲むと、体がだるくなったり、おなかが痛くなったりというのが表向きの理由だったが、要は軍隊式訓練からきているのだろう、というのをのちほど知った。軍隊では飲みたいときに水があるとは限らない。特に潜水艦は地獄だったと聞く。さておき、大相撲界の改革が本格化したのは貴乃花問題のころだろうか。それまでは改革といっても第三者委員会を入れるわけでもなく、内内で、なあなあで、インフォーマルにこっそりと済ませる機運に満ちていた。その後、一応、改革は進んだ。透明性も以前に比べれば、段違いに向上した。相撲部屋の動画配信も当たり前になり、発信力も高まった。では、何が進んでいないかというと、引退力士に対するケアなのだった。元力士のセカンドキャリアにあまりに無関心。それが昔から今へ続く最もポピュラーな無変革慣習なのだった。昨年の新弟子数は過去最少の53名。その53名ですら辞めるのが大半という現状。なにかに似ているなあと思えば、反社の実情に似ている気がしないでもない。力士のセカンドキャリア。大変なのは後援会や支援の輪のない不人気力士。では、横綱まで上り詰めたひとはどうだったか。そこで、思い出すのが北尾氏。元横綱、双羽黒の人生なのだった。明日に続く。