10月31日 朝
ひさしぶりにホテルビュッフェで浴びるほど朝酒を飲んだ。隣のテーブル。隣の隣のテーブル。何組もの家族連れを見送りつつ、まだ、飲んでいる有様。生ビール10杯ぐらい。ワイン赤白2杯づつ。クロワッサンにこれでもかとトランス脂肪酸を塗りたくり、これをかじりつつ、ワインを啜る楽しさよ。よく晴れた秋空の日差しを感じながら、飛び交う外国語の会話をBGMにして、酒は進むよどこまでも。こういう朝酒を楽しむとき、気を付けなればならないことはふたつ。決して酔っぱらってはいけないことと、酔っ払いに見えてはならないということ。あくまでエレガントに、朝のひと時をすがすがしく演出しつつ、優雅にふるまわなければならない。この点は慣れているというか、公園の昼酒で学習した遠い昔の記憶が役に立つ。ひとは見た目で判断するのだ。労務者風の男が日本酒のワンカップをあおっていると、それだけで公園の風景はざわつくが、きちんとした身なりのイケメンがサンドウィッチをつまみ、ワインをちびちび飲っていると、たとえ、手が震えていようとも、うらやましがられたりするのだ。日本酒のカップ酒に厳しく、なぜか、ワインには寛容という文化。それを利用する。むずかしいのはここに生ビールを付け加えることで、朝からビールは飲みたいが、下品に思われたくないというあなたにおすすめなのがグラスビールなのだった。ジョッキでごくごくいきたいところだが、朝はグラスで我慢する。琥珀色が朝焼けに映えるような角度を意識して、一気に三分の二まで飲み干す。プハーはできればやめたいところだ。一息ついて、おもむろにソーセージに手を伸ばす。朝食ビュッフェとはいえ、酒が入ると、朝食メニューがそのまま酒の肴へと転化するのも楽しい。結句、その夜は酒を抜いたのでした。