9月7日 朝
立ち飲み庶民四条大宮店での皮切りは瓶ビール中瓶。大瓶ではなく、中瓶。中瓶350円。値上げのうねりは庶民の足元にもじわじわと忍び寄ってきているのだった。グラスは温かく、瓶もそれほど冷えていなかったが、まずは乾杯。店内を眺め、ぱ、と目に飛び込んできたのはあんきもだった。大ぶりの輪切りが二個、載って150円。味はシーチキンそっくりなあんきも。それをつまみつつ、メニューを眺める。立ち飲み屋でのマナーは一人酒が多いので、騒がず、あせらず、じゃま立てせずが鉄則だ。ちょっとぐらい気取るのはありかもしれない。トイレに行きたくなったタイミングぐらいで立ち去るのが好ましい。続いて注文したのはカキフライ。揚げたて三個で200円。かいおうという回転ずしのカキフライを思い出した。店員は大学生風の男性一人とおばちゃんと呼ぶにはちょっと失礼かなというぐらいの妙齢のご婦人が一人の計二名。カウンターは詰めれば20人ぐらいは入れそう。壁に接着したテーブル席がみっつ。テーブルといっても幅は30センチもない。立ち飲み庶民の店内を外から覗いたのは四条大宮がはじめてだったが、その後、京橋、十三、大阪駅ビルも覗いたことがあり、そのうち、実際に店内に足を踏み入れたのは大阪駅ビルに続いて、この日が二度目だった。店内の造りはどの店舗も同様のようだ。狭いカウンターと狭いテーブル席。店内は喫煙可なので、たばこを吸わない人間にとって快適な空間とはいえないが、そもそも、庶民に快適性を求めるのは筋違いのような気もする。この日は誰もたばこを吸っておらず、比較的、快適には過ごせたが。カキフライをあてに二本目のビールを飲み干し、そろそろタイミングかなと思い、勘定をお願いする。1050円だった。たぶん。庶民をあとにすると、四条大宮の夜はとっぷりと日が暮れ、なんともいえない味わい深い暗闇が広がっていた。烏丸や河原町のようなまばゆさはなく、京都駅のようなにぎわいもない。地元民が日曜の夜に一杯ひっかけて、徒歩で家路をたどる。そういえば、店内のテレビでサザエさんが流れていた。タモリ倶楽部で立ち飲みの回があったが、こうした昭和な文化が絶滅することはないとおもう。ただし、進化はする。現金払いと喫煙のない立ち飲み屋を経営するのもありかなあ、と、ふと考えたが、やはりめんどう。いい立ち飲み屋を探す旅はありかもしれない。