7月31日 朝
7月も終わり。8月がやってくる。7月が夏祭りとすれば、8月は花火大会という感じ。中盤に差しかかると盆踊り。終盤が地域の納涼祭。そうして、初秋へとゆっくり季節は進んでいく。夏祭りといえば、和歌山毒物カレー事件から今年で四半世紀の時が経った。事件の全容にはいまだ迫れておらず、動機にいたっては推論しかない。25年まえのことだが、すごくよく覚えている。この年の夏の終わり、近くの公園で夏の余韻のような地域の祭りが行われた。カレー事件のすぐあとだっただけに手作りのものはなく、おかしとインスタントものが提供のメインだった。そのとき、食べた日清やきそばユーフォーが缶ビールと見事な相性で、暑かったこともあり、やきそばの塩分とビールの水分が体の隅々に染みわたっていくような滋養と強壮に満ちた激烈なおいしさがあった。その後、何回もおなじ組み合わせを試してみた。おいしいことはおいしいのだが、あの夏祭りで体験した感動は二度と訪れなかった。きっと、夜祭りの高揚した雰囲気、屋外での開放感、近所の公園の祭りに初参加したという新鮮味が加わって、味に二重にも三重にもインパクトを与えたのだとおもう。毒物カレー事件は和歌山市園部地区という小さな町の夏祭りで起こった。誰か有名人がくるわけでもなく、特別な催しがあったわけではない地域の親睦会のような小さな祭り。それでも、訪れた近隣の子供たちにとっては楽しい夏のイベントだったに違いなく、そこでふるまわれたカレーは青年にとっての缶ビールとやきそばに匹敵する夏のチープな夢物語の一角を構築していたに違いない。子供のころ、田舎で食べた夏祭りのカレー。オトナになり、夏が訪れるたび、缶ビールとやきそばの夏の思い出のように懐かしく思い出していたのかもしれない。