4月12日 朝

画力のある漫画家ランキングを30代以下の女性が選んだ結果、一位にワンピースの尾田栄一郎氏が輝いた。ぴっかぴか。二位が手塚治虫さんで、三位がヒカルの碁の小畑健さん。ランキングに入っているなかで、知っている名前は3人だけだったが、漫画名が記載されていたら、もしかすると、もっと知っているかもしれない。30代以下というカテゴライズでこんな年配を選ぶのだなと、しかも手塚治虫氏に至っては日本漫画界の巨匠であり、中興の祖といっていい存在のひとが入るとは意外だった。気になったのでランキングに入ったひとをすべて検索してみた。結句、30代が三人。あとは大半が40代半ばから後半。最高齢は60歳を超えている。なかには先日、思い出のひととなった藤子F不二雄先生も入っている。画力がある漫画家という質問イコール好きな漫画家と変換されている向きも見てとれないこともないが、たとえば、この質問をされたとして、自分の場合、ぱっと、思い浮かんだ漫画家は脳裏にたったひとりしかいなかった。すなわち、それは土田世紀氏であり、代表作を挙げると、おそらく編集王と答えるひとが多い――かもしれない漫画家だ。秋田県横手市出身のこの漫画家を知るきっかけは未成年という漫画に出会ったからだ。デビュー作の短編を含むこの作品は全編を通じて秋田弁が跋扈している。矢沢永吉氏を意識した秋田の不良の話がメインだ。未成年は単行本ではなくワイド版の分厚いものでガキが手にするには相当、勇気のいる値段だった。なけなしの小遣いからこの本を買ったのはこの本が今現在、必要で、将来、もっと必要になる日がくると確信したからだ。未成年は氏のデビュー作だが、この時点で画風が確立されている稀有な作家でもある。だいたい一巻と最終巻では主人公の顔かたちがすっかり変わっているのが常である日本漫画界にあって、このひとの画風はそうした経緯を踏まえず、前期と後期でがらっと変わる特殊な変異もあり、一例を挙げれば、俺節とギラギラを比べると、同じ作家が書いたものとは思えなかったりする。ギラギラは池上遼一タッチといえばわかりやすいだろうか。4月12日ということはあと二週間もすれば氏の命日となる。43歳。肝硬変。画力だけではなく、筆力にもすぐれたひとだった。