1月23日 朝
誰があなたを護るのか――不安の時代のすめらぎ、という本を読んだ。仁徳天皇が民の暮らしぶりを見て、3年間、無税にすることにしたところまで昨日は書いた。その結果、どうなったか。当然、民の暮らしぶりは上向いてきた。3年前とは違い、それぞれの家から煮炊きの煙が上っている。仁徳天皇はその間、どのように暮らしていたかというと、税金を取らないので必然的に民と同じ暮らしとなる。着衣は破れ、食事も質素というよりは粗末だ。民の暮らしぶりの報告を受けた陛下はそれを喜び、さらに三年間、無税を続けることにする。税金がないので陛下のお住まいである宮殿も屋根が破れてしまっていた。さらに3年後、6年も無税にしてもらったお返しと称し、町のひとたちが誰に命じられることもなく、仁徳天皇の宮殿を修理する姿が見られる。「6年も無税にしてもらったからお返しをしなきゃあな」「そうだよ、せめて宮殿の修繕をして差し上げて恩返しをしよう」与えるとは与えられることなり。現代では当たり前となったごく自然なこういった考え方を仁徳天皇は完全に理解していた。そのことが日本書紀に記されている。朕すでに富めり天の君を立つるはこれ百姓のためなり百姓が富めるは朕が富めるなり。日本書紀には実際に民が自ら進んで仁徳天皇の宮殿を直したと書かれており、ほかにも新田開発や治水工事も進められたとある。京都御所に石垣や堀がない理由がこれでうなづける。日本の天皇陛下は西洋の王様やシナの皇帝とは違い、私利私欲で民を支配した歴史はない。守られる存在というより国民を護ってくださる聖なる存在であり、誰からも襲われる心配がなかったからこそ、京都御所には守りがない。難波宮の跡地は現在は公園になっていて、今もその名称が残っている。そこで何時間か時を過ごすと癒される。悠久の風が感じられる。天皇陛下は祈りの存在である。そのことを深く自覚するエピソードとして日本書紀の民の竈という故事に倣うことができる。天皇陛下を識ることは日本を識ることであり、ひいては自分と自分の家族を知ることである。この本は扶桑社から出版されている。価格は1760円。漫画なのでわかりやすいが、内容は濃かった。