1月21日 朝
大寒の日の朝はクリームシチューと決めている。それで、前日から仕込んでおいたのだけど、豆乳でつくったせいか、いまいちだった。今日は粕汁をいただく。寒い日が続くが、工夫して乗り切ろうと思う。工夫といえば、不愉快なことに対する工夫というものがあって、この工夫というものをその昔「ニューヨークの24時間」という本から学んだ。この本から多くのことを学んだが、24時間の最後のほう「第六章、夜」のはじまりは不愉快なことを追い出すことからはじまる。著者である千葉敦子氏はフリーランスなので、自らがいうようにたいていの人に比べて、ずっとストレスの少ない生活をしている。されど、ライフスタイルには向き不向きがあり、フリーランスがストレスになるひともいるから一概にはいえないが、人と関わる仕事が多い人ほどストレスは生み出されやすい気はする。「日常生活の怒り、苛立ち、心配、不安、後悔、罪悪感、失望といった不愉快な感情が意外に多くの時間を私たちから奪っている」と著者はいう。いつ引かれたのかわからない蛍光マーカーが次の文章を照らし出している。「せっかくの貴重な時間を、こういう不愉快な感情に与えてしまうのは愚かな話です」「この不愉快な感情は時間を奪うだけでなく、疲労の原因にもなります」「不愉快な感情を早く頭と心から追い出すことが、心身の健康にとっても、大事だと思います。この怪物に頭と心を占領させておいても何の解決にもならないからです」解決法がふたつ示されている。ひとつは「何か好きなことに没頭する」ふたつめは「紙にこと細かく書き出す」このふたつで何が生まれるかというと本が生まれる。「不愉快の感情を時間泥棒にさせておかず、そこから本を生み出すことさえできるのです。仏頂面はやめましょう」「時間を有効に使うためには精神環境を整えることも必要なのだと思います」と著者は結んでいる。これはとても教訓めいていて、怒りも感情の揺れ動きなので、この揺れ動きを利用すると、なにか別のものに転嫁できたりする。デトロイトメタルシティの主人公は変装前の素顔時に受けた数々の試練を「恨みはらさでおくべきか」という作品に仕上げる。ピカソは祖国スペインへの爆撃をゲルニカという大作に昇華した。嫌なことは悪いことではないとおもう。数年前のベストセラーにもあったが、すべて、かすり傷なのだ。傷はやがて癒える。そのまえにその傷を利用して、何かひとつのものを作り上げる。これはエピソードであり、芸人ならネタやトークに使える。作家なら主人公の体験談にしてもいいし、バンドマンなら作詞に使える。ラーメン屋なら珠玉の激辛ラーメンが完成するかもしれないし、うどん屋なら激コシうどんがブームを巻き起こすかもしれない。ネーミングは鬼コシうどんなどいい。ちなみに鬼のコシと鬼が腰を抜かすがかかっている。自分の場合は時間のあり方というものがすべてだ。時間を有効活用するため、精神環境の整備は不可欠。の前に不愉快な感情を抱えたまま、精神環境が整うまで、その時間はニッチかルーティンに充てる。怒っていてもジムで身体を鍛えるし、走る。料理をつくる。洗い物をする。本を読む。ネットをする。散策する。ギターの弦を張るといった何も考えなくともできる作業に没頭する。リメイクシートが剥がれてきたので今日はそれを貼り替えることからはじめる。そのうち、不愉快な感情は蚊に刺されたと思えるようになる。これは岩井志麻子氏のデビュー作にあった言葉だ。「虫に刺されて本気で怒るひとはいますか」蚊に刺されて本気で怒るひともなかにはいるかもしれないが、ほとんどいない。だって、蚊だもの。虫だもの。不愉快な感情は時間泥棒。不愉快な感情を利用して別の何かに転嫁する。だいたいその二点を考えることで解決する。