1月5日 朝
酒のほそ道とともに最新刊を買い続けているラズウェル細木作品がある。それは「美味い話にゃ肴あり」というシリーズで、通称、酔庵という名で親しまれている。誰に。おれに。見つけたぞ。なにを。永遠を。それは太陽に溶ける海だ。とランボーもいっているように酔庵こそが永遠なのだ。酔庵とはひとことでいうと、酒場で、酒場というものはそれを彩る常連客というものがつきものだ。常連客が主役の酒場。そういった酒場が最近は苦手。苦手というよりはっきり嫌いといったほうが近い。形でいうとコの字型。コの字型のカウンターのなかで店主が調理しながら、目の前で酒と料理を提供する。ひとり、ふたりと個々で語り合っていたのもつかのま、いつのまにか、カウンターの全員を巻き込んで雑談がはじまる。おのずから一人酒の一見もその酒に付き合わされる、といった具合の酒場。古くは居酒屋兆治とか居酒屋ゆうれい。最近では深夜食堂などがこのスタイルに近い。昔から嫌いだったというのは語弊があるかもしれない。酒を覚えたてのころ、酒場はこういうスタイルが主体だった気もする。三宮、梅田で呑んでいた一人酒はやがて京橋、なんばを覚え、さらに十三や新世界といったディープゾーンも体験することになる。これはこれでおもしろかった。重要なのは一人酒という点で、これさえ守っていれば、守るものがいないのでどこでも気軽に入れた。歌舞伎町とアメ横で呑んだときは怖かったけど。酒飲みを続けているうちにそのような酒場から足が遠ざかった。まず、カウンターで呑むのが嫌いになった。見知らぬ客や店主との会話がわずらわしくなった。突き出しもいらなくなった。というか、じゃまになった。タバコもやめた。何より狭い席の居心地が悪くなった。狭い席で今でも通うのは鳥貴族ぐらいのものだが、鳥貴族はまた別カテゴリーなので比較にならない。そんな感じで月日が流れ、出会ったマンガが酔庵だった。酔庵の物語の99パーセントは酔庵の店内で繰り広げられる。酒と肴と会話で成り立っている。その最新刊が12巻。先日、酒ほその最新刊50巻を購入したが、ラズウェルものの主要シリーズとして完結していない作品はこのふたつしか知らない。さかなさんシリーズも一応、完結しているし、スピンオフ作品は最新刊を注視するという感じでもない。酒ほそもまったりできるが、酔庵はさらに現実を忘れさせてくれる。酒場のよさをマンガで味わえる。メタバースが今年のキーワードと今朝のモーサテでいっていたが、その原点は酔庵のような酒場にある気がする。もう苦手になってしまったかつての酒場連帯をマンガでなら楽しめる。リアルはもう無理。酔庵の12巻をどこで買ったかというとブックオフで買った。最新刊が出ていたのを忘れていた。新春セールの20パーセントオフで買えた。酒ほそと違い、12巻ではコロナの現状が描かれている。酒類のラストオーダーが19時。20時閉店。そういえばそんなこともあったなあ、と酔庵を見て懐かしく思い出した。永遠も半ばを過ぎたなあ。