6月19日 朝
睡眠の重要性はつとに感じていた。「寝るやつはバカだとおもっていた」という某有名人の言葉をうのみにし、昔は睡眠を軽視していた。寝る時間があれば、何か将来に必要な武器をひとつでも多く手に入れたり、ひとつでも早く身に着けるべきだと気ばかりがあせった頃。振り返れば、人間の欲求のなかで、最も無駄なものが睡眠時間だとおもっていた。これさえなければ24時間を最大限に使いこなせる。という理屈から昼は11時から20時まで働き、夜は0時から5時まで働くことにした。夜が休みの日は21時から7時まで遊んだ。そうした生活がいつまでも続くわけもなく、ある日、日勤の仕事を遅刻し、夜の仕事一本に絞ることにした。しかし、その後も睡眠を軽視する傾向は変わらず、朝の6時から焼肉に行ったり、午前中から呑みに出かけたり、寝る時間も起きる時間もまるででたらめだった。いまは違う。栄養学を学び、日々、トレーニングに励み、睡眠の効果をいやというほど実感する毎日を過ごしている。ちょっとまえ、仮眠についていろいろ調べた。米軍が実践している睡眠導入法や効果の高い耳栓やアイマスクを取り入れたり、できることはすべて試した。悟ったことはただひとつ。のび太くんは神でした。ちょっとした疲れを取りたいとき、目を閉じれば眠れると豪語するひとがいる。すぐに眠りに落ちることができる。これはひとつの優れた才能なのだ。おそらく性質がちがうのだとおもう。自分は魚でいえば、回遊魚だ。じっと物陰にひそんでいたり、一か所にとどまっていたりするのが得意ではない。得意ではなかった。ADHDやアスペルガーといった呼称がしっくりくるAB型の末っ子で、そのままの気質というか、自分のわがままを通して生きてきた。いまさら反省する気もさらさらないし、世のために尽くすが、わがままは貫き通せると信じているところもある。この性質はある本との出会いによって、先鋭化した。その本のタイトルはニューヨークの24時間というものだが、著者は人間を忙しい人と暇なひとのふたつにわけることができると冒頭から力説する。この本から学んだことは多いが、なかでも、有用な情報はスピードアップだった。自分はひとことでいえば、マイペースなのだとおもう。マイペースと聞いて、のんびり、とか、ゆったりを思い浮かべたひとはのんびりとかゆったりしたひとなのだろう。マイペースはあくまで自分のスピードであり、ひたすらに速く動くか、ひたすらに多くつめこむかしないと落ち着かない性格のひとが世の中にはいるのだ。ドラマ古畑任三郎の真田氏の回に共感をおぼえ、憧れを抱く。明日に続く。