10月4日 早朝
10月4日は投資の日。というメールがさる銀行から届いたので、今日が10月4日で投資の日ということを知った。コロナ禍において一喜一憂の日本株だが、まあそれはいい。未来への投資の技術のひとつにディープフェイクと呼ばれるものがあるらしく、この技術を用い、芸能人の顔でAVを作った大学生らが摘発された。一部では有名だったそうだ。逮捕理由は名誉毀損と著作権法違反。意外にも初摘発だという。事件の概要はひじょうにシンプルなものだが、その技術の進化には目をみはるものがある。その昔、愛と幻想のファシズムという小説のなかに似たエピソードが出てきて有名人の顔でAVをつくるというものがあった。しかし、莫大な費用が発生するから、そのカネで女優に逢いにいったほうが早いよ、と諭され、笑って終わるというものだった。時代は変わった。あれから時間は流れた。今回の動画作成はフリーソフトというのだから隔世の感はぬぐえない。AIの発展がすなわち人類の発展とすりかわるのかもしれないが、発展が必ずしも幸福感の増大や繁栄につながるとはかぎらない。現にかつては存在しなかった被害者が続出している。被害者の多くは有名人だろうけれど、この技術の応用によって、リベンジポルノの拡散なんかされた日にはその悔しさは尋常ではないだろう。されど、技術は進み続ける。要は倫理観の問題であり、クローン問題が世を騒がせたようにいずれ法の網が世界を覆うはずだが、確実にいえることはひとつ。映像の価値は低下するいっぽうだろう、ということ。防犯カメラなんかにこの技術を転用されたら、そういった進化の過程が来るとするならば、21世紀型の犯罪が手を変え品を変えいたるところにはびこることになる。デジタル庁の創設は時勢の要請だったのだろう。話は変わって、今朝、川沿いを通ったのだけれど、ちょっとまえまで夏の香りに親しんだ土手に彼岸花が咲き誇っていた。秋を実感した。少し肌寒かったし、季節も確実にまえに進んでいるのだろう。そういうことなのだ、と納得するしかない。技術革新と法整備の急務はまさにいたちごっこのようなもので、たぶん終わることはない。前に進むしかない。それで、言葉の意味は知っていても、あまり知られていないいたちごっこというゲームは片手の上に片手を重ねていくというもの。ひとりが左手をかざすと、もうひとりがその上に左手を重ねる。ひとりがその上に右手を重ね、もうひとりがその上に右手を重ねる。最初の左手をその上に重ね、その上にまた手を――長らく生きてきたが、このまえはじめて知った。前に進むとは同時に未知との遭遇でもあるのだ。