3月13日 午前中
本日は睡眠の日だそうです。睡眠ほど大切なものはないとしみじみとベッドに思いを馳せる昨今、そういえば旅館とかで寝るふかふかの布団も捨てがたいなとおもった。最近、ふとんで寝たのはいつだろうと考えるにリビングの隣が畳の部屋なので、よくぶっ倒れて布団かけて寝てるなと思い至ったのもつかのま、敷布団を用いて寝たのはいつだろう。もう思い出せないくらい昔のことだ。椎名誠氏のエッセイに「せんべい布団で眠れたのは若かったからだ」というような文言が出てくるのだけれど、これを知ったときはそんなもんかなぐらいで読み飛ばした。なぜか、いま唐突にその風景が浮かぶというか、寝具の重要性を深く認識するたびにあのエッセイのワンシーンを思い出す。寝るのが仕事なのは赤ちゃんだけではない。人間は寝ることが仕事なのだ。せんべい布団などという言葉を果たして今の20代が知っているだろうか。言葉で知っていたとしても実際にそこに寝転がった人間は少ないのではないだろうか。あの貧しくもやさしい温もりを時折、懐かしく思い起こしてはもう二度と戻ってはこない少年時代やそのころのひとたちとのできごとがふいっと猛スピードで流れていく。せんべい布団よりひどかったのはエアベッドを手に入れたときで、たしか2万か3万出して買った。翌日に小さな穴が空いた。寝るときには膨らんでいるのだけど、起きるとぺちゃんこに潰れていて、ただのフローリングの上に寝転がっている状態なので、肩や腰に相当の負担がかかり爽快とはほど遠い朝となる。また、米国製なので製品に対するデリカシーは皆無で、電動の空気入れは爆音だった。さぞかし近所迷惑だったことだろう。そういった生活がしばらく続いた。なにせ、結構な値段で購入したエアベッドで、買い替える余裕もなかった。エアベッドが届いた日はまるでウォーターベッドを夢見た子供のような心持ちだったことをそこはかとなく覚えている。時は流れた。今はクイーンサイズのベッドに横たわり、ぐっすり眠る毎日を送っている。