週末の台風を二度もしりぞけた。今朝は日差しが柔らかく、じゃっかん風はあるが気持ちのいい青空が広がっている。選択肢の広がりに加え、物流網の発達のおかげで嵐の日も自宅で買い物を済ませることができる。とにかく自宅環境の構築に余念がないのが一点と、別に今日中に持ってきてもらうわけでもないので気兼ねがない。場合によってはピザなどの飲食物を台風の日に注文するひともいるだろうけれど、自分の場合は利用を躊躇してしまう。日ごろから備蓄とまでいかなくとも冷蔵庫以外の棚や引き出しにも気を使うようにしている。乾物、缶詰、インスタント、スープ系の粉末の類、シリアル、真空パックというところか。前述の買い物は食料品ではない、娯楽の部分が大半で、今もメール便も含め、いくつか待っている状態だ。外に買い物に出かけるほうがはるかに好きなのだけれど、実際、購入に至るのはネットのほうが多い気がする。こう立て続けに注文していると、正直、何を頼んだのか、いつ頼んだのか、何が届いていないのか、把握していない。それが、ちょっと楽しいというか、周期的に宅配ボックスを覗く習慣さえ忘れていなければ、忘れていた購入品はちょっとしたサプライズとなる。もちろん、小物に限るのだけど。またぞろ、本が溢れてきてチェストの上などを侵食しだしたので回転式の本棚を買った。これは要組み立てなので届く日を確実に認識しておかなければならない案件だ。回転ラックは今回を含めると三台目になる。当然、本棚はほかにもあるが、回転式が収納力、コスト、省スペース、手軽さでもっとも優れている気がする。これがいっぱいになると、もうほとんど打つ手はなくて、引っ越すか、本を減らすかしかやりようがない。けだし、ひとというのは何かを買って生活するしかない様式をここ何十年で確立した。よもや、この暮らしから離れることもままならない状況だ。しかも購入場所は減るどころか右肩上がりに増殖し競合し以前では考えられない値引き合戦と品質保証を繰り広げている。消費者は次々にあらわれる新製品なり、それにともなう廉価品などを買い求める。かつての大量消費社会が手を替え品を替え、ネット上で展開する世界だ。されど、ここで一石を投じるライフスタイルが登場した。断捨離をはじめとする持たざる暮らし。いわゆるミニマムライフの流行だ。これはやってみればわかるが非常にわかりやすくていい。物がないという前提で暮らすと絶対要と思っていたものが意外に必要ないことがわかる。この手の暮らし紹介で最近、感銘を受けたのが、アズマカナコ氏の「電気代500円。贅沢な毎日」という本だ。筆者は実際にあらゆる文明の利器に別れを告げ、たとえば、掃除機をやめて、ほうきで掃除をしたりしている。究極のエコライフがそこにある。強い憧憬と結句、自分は無理だなとする諦めの境地を教示してくれる指南書ともいえる。こうした動きに呼応するようにリユース、リサイクル、リデュースといった概念が伝播し、リユースショップも盛況を極めている。買い叩かれるのを想定しても、その場で決済できるのはとても楽だ。先日、押し入れで眠っていたオイルヒーターを1200円で売った。翌日、店頭での売値をみると4800円。数日後には売れていた。差額を考慮すると直接やり取りするほうがいいように思えるが、まさに仲介手数料と呼ぶべきムダも利便性の前には歯が立たない。率直にいえば、もっと便利な暮らし、もっとわずらわしくなくて、もっとのめりこめる生活を追及するタイプだと自分のことを理解している。横の広がりよりは縦への重奏を夢見ている。単純にたとえ豪邸であっても車ででかけるよりは高層ビルの上層で暮らし、そのビル内ですべてまかなえる暮らしを目標としている。台風とは無縁の起居。今もわりと理想に近いが子どものころ夢見た21世紀をいまだ追いかけている。こういうと、六本木ヒルズなどを思い浮かべるひとも多いとおもうが、どちらかというと5分後の世界のアンダーグラウンドに近い。もっといえば、それの超未来版というべき発想だ。夢でもたまにみる。23階にジム。40階に温泉旅館。87階にシャトル便の乗降駅があり、72階に野球場とサッカー場。98階に牧場。3階から16階まで伊勢丹。あと、大学と総合病院と、一瞬、九龍城を想像してしまったが、警察署や消防も備えていて、365日24時間施設警備員が1000人規模で常駐しているような。ビルの29階に滝が流れている某通信大手の社長室の話は聞いたことがあるが、もっとレジャー的というか、アイデアとしてはシンガポールのマリーナベイサンズに近くて、112階にプライベートビーチがあり、タイやヒラメや深海魚も泳いでいるような巨大集合住宅。当然、エレベーターは100基以上の完備が必要となる。エレベーターの概念を覆すような超高速で広々としていてシッティング式でカフェコーナーとレストルームも備えているような。そうして考えるとまだまだ便利な生活を手放す気にはならない。台風一過の空を眺めながらAmazon購入の某ケーブルを返品しようか迷っているが、一長一短というべきか。