9月21日 朝

胸がすかっとした。朝、起きて、野球速報を見ると、その時点で三打数三安打一盗塁という大谷の成績。盗塁のほうが先に達し、50-50目前。おそらくドジャースタジアムのロッキー戦で決まるだろうと思っていた矢先に飛び出した49号ツーランホームラン。圧巻は次の打席だった。50号ツーランホームラン。あっさりと50-50を達成し、9回にもホームランが飛び出した。盗塁もひとつ決め、終わってみれば、51-51に到達。チームは20得点の大勝。6打数6安打10打点3本塁打2盗塁という圧巻の一日だった。胸がすかっとした、というのはこの成績に対してばかりではなく、大谷に批判的な周囲の声が静まり返ったことのほうが大きい。三冠を取れば当然、MVPはオズーナのものだ。三冠はそれほど難しいと持ち上げる同郷のプホルス。守備をするリンドーアのほうがMVPにふさわしいときつい冗談を放ったニューヨークの記者。大谷とジャッジならジャッジのほうがいいシーズンを送っていると判断ミスを冒したスモルツ。自らがMVPを獲れなかったのはDHのせいと大谷に嫉妬するオルティス。粗品氏ではないが、みーんな、老害。ひとつひとつ反論する。まず、プホルスへのインタビュー時点で三冠王に最も近かったのはオズーナではなく、大谷。現時点で本塁打王、打点王は確定といっていい。オズーナがタイトルを手にする確率はゼロに等しいだろう。リンドーアを支持する理由のひとつが全試合出場。先日、腰を痛めてあえなく欠場。もうひとつの根拠がwarの存在。守備と打撃を足したリンドーアのwarも昨日時点でDH専門の大谷のほうが上回った。62本を更新するのではないかといわれていたジャッジは失速。ホームラン数も大谷に二本差まで迫られた。長打数はジャッジの89を抜き去り、92で大谷が抜いた。MVPを獲れなかったのはDHのせいではなく、エーロッドがすごかっただけ。オルティスのキャリアハイは2006年の本塁打54本だが、残り9試合でこの記録を追い越し、オルティスの主張をしりぞけてしまえ。あと三本。ついでにジャッジにも競り勝ってほしい。投手を務めない大谷の基底ばかりが独り歩きしているが、最も大きな活躍の拠り所はチームが変わったことだと思わずにはいられない昨今、エンゼルスはとうとうアスレチックスに5ゲーム差もつけられてしまった。最下位でシーズンを終えるのは確実だろう。50-50を決めた昨日はくしくもドジャースがポストシーズン進出を決めた日でもある。なんのエンタメでもそうだと思うが、モチベーションを保つというのがひとつの課題であり、最高のステージを見たければ、また、客も会場の雰囲気も最高でなければならない。トラウトもwbcのとき、そんなことをいっていた。大谷の活躍を見て、ドジャースに移って本当によかったとおもわずにはいられないのだった。

9月20日 朝

コメの価格高騰を受けて、コメ離れをすることにした。当面はオートミールを主食にしようと、その都度、鍋で炊くのはめんどうなので、ごはんと同様、炊飯器でコメのように炊き上がらないか、実験してみた。実験は失敗に終わり、いつもどおりのおかゆが出来上がった。そんなさなか、コストコにジャスミン米を見に行く計画を思い出し、実行に移すことにした。普段は玄米にビタバレーを混ぜたものを主食にしている。その玄米が底をつきそうになっても、コメ価格の高止まりは続き、新米が流通すれば品薄は解消されるというバカ大臣の言質には、そういえば、コメ価格の下落については言及していなかったなあ、と、それでも新米が出始めれば価格は下がると信じ、ネット検索で裏技を探し続けた。新米の予約販売がはじまるも価格が落ち着く気配はない。コメ販売の関係者に対する不信感は一気に高まる。玄米、同様、身体によいといわれるジャスミン米もなぜか国内のコメ価格上昇につられて値上がりしているのだ。猛暑とかインバウンドとか当初のコメ不足の説明に輸入米は関係ないやん、と。1キロ300円以上の関税を考慮しても、なお割安なカリフォルニア米、業務スーパーの定番、カルローズでさえ、ネット販売の米屋では日本米と似たような価格設定をしている。そんな折、コストコにコメを見に行ったのだった。果たして、ジャスミン米8キロが昔と同じ価格、税込み2978円で販売していた。ほかのコメが10キロ軒並み6000円台であることを考えれば、破格といってよかった。久しぶりにコストコで買い物をしたなあと充実感に浸りながら8キロのコメを抱え、家路を急ぐ。これからはジャスミン米にビタバレーを混ぜたごはんが食卓を飾ることになる。ジャスミン米がなくなるころ、巷間のコメ価格も落ち着いていることだろう。そうでなければ、というか、このままの価格設定が定着すれば、コメ離れは加速の一途をたどるかもしれない。小麦の暴動を遠い空と眺めていたら、日本の治安もおぼつかなくなってきた。鬼平のころには飢饉の打ちこわしがあったような国であることをひたに思い出し、主食が高い国の治安悪化をなめてはいけないぞ、と瑞穂の国の終焉が日本の終わりを意味することも併せて肝に銘じるのだった。

9月19日 朝

コメの価格高騰を受けて、坂本農林水産大臣に抗議する意味も込めて、今までが安すぎた、これが適正価格、とほざく生産農家にむけて、裏技を探し続け、結句、見つからなかったので、米離れをすることにした。最近は小山田商店というところをひいきにしていたのだが、最安のふさこがねが10キロ6380円。近所のスーパーでパスタが税込み198円。10キロに換算すると1980円。業務スーパーのオートミールが500グラム税込み140円。10キロに換算すると、2800円。なぜ、6380円の玄米を購入しなければならないのか。コメなしで、十分、やっていけるのではないか、暮らしていけるのではないかと考えて、昨日はさっそく、オートミールの米化を試みたのだった。すなわち、オートミールのみを炊飯器で炊くということだが、いままでも何度か試したことがあるのだけれど、その都度、吹きこぼれて、糊状のどろっとした液体の後始末をするのが常だった。キッチンボードの定位置ではなく、後始末の可能性を考えて、流しにあるコンセントに炊飯器をつなげてみた。三カップ。180かける3ではなく、オートミール用の200グラムかける3に水を白米3の位置まで入れてみた。使ったオートミールはロールドオーツ。玄米より少ない水分量。急速炊飯36分のモード。結果は炊飯器がぶくぶくと音をたてはじめると、ぶくぶくと糊があふれ出してくるのだった。炊きあがったオートミールをみると、いつもとおなじようなおかゆだった。オートミールのみを三合炊きするひとがネット検索でもユーチューブでも見つからなかったので、自分で実行することにしたのだが、今度はもう少し、水分量を減らして炊いてみる。と思った矢先、ふ、と思いたち、コストコに行ってみたのだった。果たしてそれは正解だった。明日に続く。

9月18日 朝

ジムの水風呂でとうとう事件が起きた。事の発端は日曜しか見かけないサウナ利用客が水風呂に自らのかぶるサウナハットを浸していたのをこれまた日曜しか見かけないサウナ利用客が見とがめたことだった。水風呂にサウナハットを浸すという迷惑行為。これを最初に見かけたときは衝撃だった。ムーミンに出てくるミーにサウナハットをかぶらせたようなおっさんで、体格もミー同様、非常に貧相。年のころでいうと、70代から80代ぐらいの見た目。その容貌から妖怪と勝手に名付けているのだが、日曜の午後に行くと、だいたいいつもいるメンバーのひとり。このおっさんの悪癖はサウナ室に入るまえ、自らのサウナハットを水風呂の水に浸けてから、サウナ室に突入するところだが、はじめて見たときは確かに怒りを覚えた。だが、本当の悪癖はその後に起きるのだった。妖怪はサウナ室を出たあと、当然、水風呂を利用する。その際、自らのかぶっていた汗でぐちょぐちょになったサウナハットを水風呂の給水口で洗う。さらに水風呂に浸かりながら、水風呂のなかでも洗い、水風呂のなかでしぼるという妖怪と名付けられて当然の行為を当然のように行う。当初の怒りはその後のマナー違反連続目撃で投げやりになってしまった感もあり、ただただ妖怪には近づかないようにしていた。敬老の日。午後3時ぐらいだったと思う。いつものように入浴前、念入りに身を清めていると、ひじょうに大きな声が大浴場の室内にこだました。洗い場から振り返ると、ボサボサ頭のメガネの男性が水風呂の妖怪に向かって怒鳴っているのだった。「なにしとんねんこら、きしょいんじゃ、やってええこと、わるいこと、ああでもねえ、とんでもねえぞ◎△$♪×¥●&%#?!」興奮しているのだろう。さらに畳みかけると、妖怪はひとこと「うるせえ」と返したのだった。メガネさんは「ええ年して、そんなこともわからんのか」みたいな年配者に対する決め台詞をその後、吐き捨てていた。それは聞き取れた。洗い場にはほかに二人いたのだが、目を見合わせ、おろおろしているというか、事態を見守っている様子がうかがえる。とりあえず無視しようと決めた。身の清めも序盤戦であり、その後、長く続くルーティンが控えているのだ。ひとしきり怒鳴ったあと、きしょい、きもい、を連呼し、メガネさんは浴室をあとにしたようだった。と思っていたら運営のひとりが浴室にやってきて、湯船の男性に謝っている。メガネさんはまだいたようだ。今後、何かしらの対策が打たれると思う。たぶん、貼り紙をするぐらいだろうが、メガネさんによって、一石は投じられたのだった。メガネさんに拍手したい気持ちとともに(ほかにもいっぱいマナー違反があるですよ、マギーが水風呂をお湯でうめたりするですよ)と告げ口したい虎の威を借りる自分のいやらしい狐部分がぼわんと頭に浮かび上がり、慌てて泡で洗い流したのでした。

9月17日 朝

会員であるスポーツジムにひとり迷惑な客がいる。その名はマギー(仮名)マギーの迷惑行為のひとつにドライヤーの長時間占拠というものがある。ドライヤーのまえで何をしているかというと、さっきまでジムエリアで着ていた自らのTシャツを乾かしている。なにゆえ、こんなことをしているのか。答えは明白で、明日もこのTシャツを着るためなのだった。遭遇の積み重ねでおおよそ一週間ぐらい同じTシャツを着ていることが判明した。ドライヤーの独占時間は30分か、それ以上。こうなると、その間、残った二台のドライヤーを会員同士、譲りあって使うという形になる。平日、午前中から昼にかけて、とはいえ、風呂だけの利用者もいるし、ドライヤーを使いたい人間が決して、少ないわけでもなく、このマギーの占有行為にいら立ちを募らせる会員は少なからずいたのかもしれない。ある日、三台あるドライヤーのうち、一番、広い場所に設置されていたドライヤーがおそらく潰れて、撤去された。その日からマギーは二番目に広い場所を占有するようになった。今度は一台しかないドライヤーを譲り合って使うはめになるのだが、マギーは他の会員のいら立ちを意に介することなく、たっぷりと時間をかけて公共のドライヤーを相も変わらず独り占めしているのだった。ところが、マギーの春にもいよいよ終焉が訪れることになる。苦情も意見も、もしかするといっぱい届いていたのかもしれない。見かねた運営がとうとうアクションを起こした。いつものようにジムで汗をかいたあと、風呂エリアを訪れると、パウダールームの鏡に見慣れないステッカーが貼られていた。髪以外のドライヤー使用禁止。※頭髪以外へのドライヤー使用はおやめください。ドライヤーの絵柄とともにTシャツの絵も添えてあった。爆笑というか、失笑してしまった。実はドライヤー撤去後、自らのドライヤーを持ち込み、ストレスを克服していたこともあり、マギーのことは無視しようと努めていた。そんなさなかの注意書きなのだった。ちょっとだけ胸がすっとした。

9月16日 朝

通っているジムにひとり迷惑な客がいる。その容姿から勝手にマギーしろうと名付けているのだが、マギーの迷惑行為は水風呂をお湯でうめるという暴挙だけで終わらなかった。浴槽から上がってからも、公共性を無視した独特の迷惑行為は続く。マギーは一応、ジムの会員であるから、ジムエリアも利用するのだが、ある日、毎日、同じトレーニングウェアを着ていることに気づいた。正確に記すと、赤と緑の半そで半パン上下セットをだいたい一週間ぐらいのローテーションで着まわしているのだ。この謎はすぐに解けた。マギーは大浴場の脱衣場にあるかごを必ずふたつ占拠し、いっぽうを脱衣かご、いっぽうをTシャツ干しに使っている。このTシャツはいましがたマギーの主要トレーニングマシンであるクロストレーナーで汗を流していたTシャツに相違なく、当初はなぜ、これを脱衣所のかごにぶらさげているのか、わからなかった。毎日、ジムに通っていると、事態はすぐに判明するのだった。これも遭遇の積み重ねで大まかに把握したのだが、浴槽から上がったマギーは素っ裸で体重を測ったあと、洗面台のまえをたっぷり30分は占有する。その間、ジムに備え付けのドライヤーはつけっぱなしで、三台あるドライヤースペースのうち、最も広い個所を独占するのが常だった。ヘアケア以外になにをしているかというと、脱衣かごにぶら下げていた着終わったはずの自らのTシャツをドライヤーで乾かしているのだ。がっつり30分かけて。当然、その間、使えるドライヤーは二台しかなく、まあ、男性は長い人で使用時間5分ぐらいなものなので、今まではなんとかなっていたのかもしれない。そのうち、ひとつが故障したかなんかで、撤去されてしまった。その場所はマギーが日ごろから占拠していた最も広いドライヤースペースだった。ある日、風呂から上がると、マギーが二番目に広いドライヤースペースに素っ裸で腰かけていた。ほかに使用者はいない。めずらしいこともあるものだ。広い場所が空いているのに、と、ドライヤーを探すと、ドライヤーがなくなっていたのだった。そのまま、改善されることなく、今のいままでドライヤー二台状態が続いている。明日に続く。

9月15日 朝

利用しているジムの大浴場に迷惑な客がひとりいる。その容貌から勝手にマギーしろうと名付けているのだが、マギーはサウナを利用することなく、温冷交代浴を楽しむのが慣例。温湯と水風呂を行き来し、いろいろと癖のある儀式を繰り返す。実害のあるのは足で湯舟をかき回す儀式で、これがはじまると湯船に波動が起こり、ゆっくりと浸かっていられなくなる。やがて、温湯での儀式が終わると、へりをまたぎ、隣にある水風呂へと突入する。当然、かけ水はしない。かけ水の重要性については湯遊ワンダーランド第二巻「水場を巡る争い」のセリフを引用する。「湯船に入ったからきれいとかそういう問題じゃないんだよ。水風呂がぬるくなるから入る前に水かけろって言ってんの」そう、サウナーにとって最も重要な問題は水風呂がキンキンかどうか、ということで、身体の冷却なしに水風呂へ突入する人間をみると、不快ではある。されど、これは許容の範囲内で、不快だが、サウナから水風呂のかけず小僧とは違う。水風呂の清潔さを保つ身体の洗浄省略とは異なり、やり過ごそうと思えば、やり過ごすことのできる目撃といえなくもない。マギーのマギーたるゆえんはここから凡人の想像をはるかに超えてくるところにあった。かけ水なしで、水風呂に入ったマギーはかけ湯用に湯船のふちに置かれた洗面器を用い、水風呂に温湯のお湯をいれはじめるのだ。これを洗い場の鏡から目撃したときは衝撃だった。注意すべきなのだろうが、あまりの事態に我を忘れて、その後も忘れたままなのだった。水風呂をお湯でうめて、自分にちょうどいい水温にしていつまでも浸かっている。すっかり忘れていた。昨日、サウナを利用し、マギーのいる水風呂に入ると、一回目に入ったときよりも、やたらぬるく、目の前に洗面器が置かれていた。(やりやがったな…)一瞬、目の前が怒りでまっしろになった。さすがに頭にきたので、ぬるくなった水風呂の水を目の前の洗面器で何杯も何杯もかき出してやった。揉めたくなかったので、怒りを抑えつつ、すぐにサウナ室へ戻ったが、そんなさなか、マギーのもう一つの迷惑行為をたしなめる注意書きが洗面の鏡に貼られていたのだった。迷惑行為は浴槽を上がってからも続く。明日に続く。

9月14日 朝

サウナの迷惑行為。一位はかけず小僧と思っていたが、そうではなかった。もっとすごいのがいた。見逃していた、というよりはすっかり忘れていた。昨日、がっつり思い出した。通っているスポーツジムの大浴場利用者。癖のある人間が何人かいる。そのなかで、最も癖のある利用者がやたら長風呂をするおっさんで、その容貌から勝手にマギー司郎と名付けているのだが、長風呂の全容が判明したのは何度もの遭遇の積み重ねの成果であり、知りたくもなかったのだが、知ってしまうとその異常性は看過できない愚行であり、およそ公共という概念がマギーには備わっていないようだった。まず、身体を洗ってから入浴するのだが、この点は及第点といえるかもしれない。問題は備え付けのリンスインシャンプー、ボディーソープの使用量であり、とにかく大量に使う。入浴前の儀式を終えると、巨大で年季の入った風呂バスケットをかご置き場の中段に置き、湯船に浸かる。ジムのお風呂の構造としては七つほどの洗い場があり、それを背にどんとメインの大浴場がある。その隣にくっつく形で二人用、無理をすれば三人が入れるぐらいの水風呂が設置されている。マギーは水風呂のすぐ隣の湯船に浸かるのが慣例。しばらく静かに入っていたかと思うと、おもむろに両手を持ち上げ、耳の位置ぐらいで、小さなコップを握るような手の形を保ちつつ、ぶらぶら運動をはじめる。それが終わると、胸の位置で両掌を広げ、せっけんの泡をあわだてるような行動、水晶で占っているような感じといえばよいのか、重ね合わせた両掌の間に5センチぐらいの空間をつくり、空中でぐりぐりと手のひらを回し始める。ここまでは奇妙なだけで害はない。その次の健康体操。湯船のなかで足を広げ、かき回し始める。座ったまま平泳ぎをしているような状況だが、この体操がはじまると、湯船に波が起こる。一番、離れた場所に浸かっていてもマギーが湯舟をかき回すたびに波動がやってきて、こちらの身体がゆれはじめる。こうなると、もうゆっくり入っていられない。揺れる湯舟がどれぐらい不快か、一度、試してみればわかるが、不快なので、まだ、十分、温まっていなくとも水風呂に移ることが多い。一連の体操が終わると、マギーはすぐ隣の水風呂にかけ水をすることなく、そのまま片足を持ち上げ、へりをまたぐ形で、ずぶんと突入する。ここからまた変わっているのだが、忍者が忍法をつかうときのように両手をゴルフグリップににぎり、くちびるをへの字に曲げ、ひたすら耐え忍ぶような顔を浮かべる。指にかなり力が入っているように見受けられる。謎の行動だが、害はない。ここからとんでもないことをはじめるのがマギーのマギーたるゆえんなのだった。明日に続く。

9月13日 朝

ジョギングをして汗をかく。サウナに入って汗をかく。汗はいろんなものを排出してくれる。いわゆるデトックスというやつだが、身体の老廃物だけでなく、心の老廃物のようなものも一緒に連れて行ってくれる。汗をしっかりとかいたあとは、たっぷりと水分を補給する。水分はいろいろなものを身体に注入してくれる。身体が潤うだけでなく、心の潤いのようなものも一緒に連れてきてくれる。人生の縮図のような醍醐味が極めて短時間で繰り広げられるこのような時間を毎日、毎日、ひたすらに味わっていると、習慣化はもとより、いまや日々の暮らしに不可欠な要素、まさに水のような存在と化してしまった感がある。身体の水分量が減ると、身体が水分を欲する、この単純な構造を作為的に再現してしまったような、あるいは人間に不可欠な睡眠と活動という生理的欲求を人為的に再構築するような作業を一連の流れで体得できるのがエクササイズとサウナのコンビネーションの妙なのかもしれない。これはだしの旨味にも似ていて、イノシン酸とグルタミン酸を掛け合わせると、プラス2になるわけではなく、かける3になるようにとんでもない相乗効果を得られる。これにグアニル酸が足された日には、もうとんでもなく至福のレベルが跳ね上がるわけで、これをデトックスの分野にそれぞれ当てはめると、水風呂がグアニル酸に該当することがわかる。エクササイズ、サウナ、水風呂を掛け合わせる。旨味はとんでもでべそなレベルへと到達する。そして、デトックスのあとには待望の補給タイムが待っている。キンキンに冷えた生ビール。大ジョッキを一息に飲み干す。ビールは水分補給にならないとさとす輩にワンパンぶちこんで、返す刀で、おがわりぐださい。枝豆をつまみながら二杯目が到着するのを夢見心地で待つ。こうして、日曜日の予定が決まったのだった。

9月12日 朝

夜中、雨にぬれてびしょびしょになりながら歩いていたおばあちゃんを車に乗せ救助したとして、20歳の若者が表彰を受けた、というトピックスがあった。90歳のおばあにバールを振りかざす外道がいるかとおもえば、こうした若者も世の中には存在し、いやな世の中に一筋の光明を見たのだった。飲食店勤務のこの若者が夜中の12時半、車で家路を急いでいると、おばあちゃんが歩いているのを見つけた。外はどしゃ降り。視界が悪く、事故に遭ってしまうのではないかと思った若者は車を停め、おばあちゃんを助手席に乗せるという男気のある行動をとるのだが、認知症が進んでいるのか、なかなかコミュニケーションが取りづらい。なんとなく理解したのは甲賀市内へ行ってほしいということだった。市内へ向かったはいいが、結句、住所も電話番号もわからないという。それで、最後は警察に電話し、事件は落着を見るのだが、この若者のすばらしい点は見た事実をほったらかしにしなかったこと。びしょ濡れの他人を助手席に乗せるという行為もなかなかとっさにできることではない。若者のやさしさがにじみ出ているというか、もしかすると、おばあちゃんこだったのかもしれない。さらに好感を抱いたのは表彰を受ける若者の髪の毛がまっかっかだという一点。マクドナルドもバイトの髪色の自由を公言する昨今、カラフルな髪色というのはそれだけで、日本の変化を実感するランドスケープといえる。某元アイドルが「出勤の流れ見て色がないなあ」と、エックスでつぶきやき炎上したが、もし仮に出勤の人が色とりどりなモヒカンやスパイキーヘアで、レディガガのような恰好だったらどうだっただろう。なんの意味もない見た目の話だが、なんの意味もない見た印象でつぶやく元アイドルは「出勤の人の流れみて色だらけなんだなあ、と。俺は色がないなあと思う朝」とつぶやいたかもしれない。わかりにくい世の中というのもまたわかりやすい世の中と表裏一体なのだと今日も人間力の向上に努めようと思う。